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メディアインプレッション

みんカラ:VikingContact 7特集

秘密は“電子制御との協調”。コンチネンタルのスタッドレス「バイキング・コンタクト 7」は厳冬の北海道でも通用するのか?

レポート:山田弘樹  写真:小林俊樹

 

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山田弘樹:モータージャーナリスト。
自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代にレース活動を始め、その後も様々なカテゴリーのレースに参戦。この経験を活かしモータージャーナリストとして執筆中。またジャーナリスト活動と並行してスーパーGTなどのレースレポートや、ドライビングスクールでの講師も行う。日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

1:タイヤメーカーであり、タイヤメーカーにあらず

コンチネンタルのスタッドレスタイヤ「VikingContact 7(以下:バイキング・コンタクト 7)」を、北海道にある同社のテストコースと一般路で、2日間たっぷりと試乗することができた。
バイキング・コンタクト 7のインプレッションを始める前に、まずはコンチネンタル社について話をしよう。同社は、1871年にドイツ中部の産業都市、ハノーバーでタイヤメーカーとして産声を上げた。創業から149年の歴史において、「世界初となるトレッドパターンを持つ着脱可能なタイヤ」を1904年に発売。以後も、環境性能の向上をいち早く実現した「ContiEcoContact」(1991年)や、市販タイヤで最高速度360km/h承認となった「ContiSportContact2 Vmax」(2003年)など、常に時代を先取りしながら消費者のニーズに応えてきたメーカーである。
この“ゴムから始まった活動”は、エンジンマウントやブッシュ、果てはエアサスペンションといった自動車部品全般の製造にまで及ぶ。1995年にはオートモーティブ部門を設立し、自動車メーカーと共にABSやESC(車両安定装置)といった車両制御システムおよびソフトウェアを開発。交通事故による死亡者および負傷者、交通事故そのものをもなくそうという「ビジョンゼロ」のコンセプトを掲げ、自動運転技術も視野に入れた先進安全技術への取り組みを行っているメーカーなのである。
コンチネンタルは、タイヤメーカーとして世界第3位(2019年)であるものの、この売上高はグループ全体で見ると30%にも満たない。その真の姿は、世界トップ3に入るメガ・サプライヤー。さらに言えば、サプライヤーとして唯一タイヤ製造を行うその高い技術力こそが、グループ全体にインタラクティブな影響をもたらしていると言える。筆者は今回の試乗でメガ・サプライヤーの実力を体感すると同時に、改めて欧州のタイヤ技術の奥深さと、スタッドレスタイヤの可能性を思い知ったのであった。

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2:ドイツ仕込みのスタッドレスで厳冬の北海道に挑む

今回試乗したバイキング・コンタクト 7は、コンチネンタルにおける最上位のスタッドレスタイヤだ。日本市場向けには「NorthContact NC6」というスタンダードなスタッドレスタイヤも販売されているが、バイキング・コンタクト 7はそれよりもさらに性能や乗り心地、燃費性能といった要素を全方位的に高めた”プレミアム”スタッドレスタイヤである。
とにもかくにも、今回の試乗は驚きの連続であった。まず訪れたのが、北海道は紋別のテストコース。ここはスタッドレスタイヤの開発拠点というよりも、前述した制御技術の実験・開発を行う現場であり、まずその施設の広大さに驚いた。
最初に試したのは定状円旋回試験路。ここではなんと30R、50R、100Rと、速度に応じた三段階の試験路が用意されており、試乗車はメルセデスの主力セダン「C180」。駆動方式は4MATIC(4WD)でなく、大胆にもフロントエンジン・リアドライブ(FR)で、タイヤサイズは225/50R17という組み合わせだったのである。なお、バイキング・コンタクト 7の実力を図るために、今回は国内メーカーの実績あるスタッドレスタイヤも用意されていた。
当日は路面状況の悪化により、曲率の高い30Rは断念。バイキング・コンタクト 7の旋回性能をある程度の速度をもって確かめるために、50Rの試験路から試走した。
まず感心したのは、タイヤと路面の自然なコンタクトフィール。バイキング・コンタクト 7に使われる「ノルディック・コンパウンド」は、シリカを高配合したソフトなゴムで、ここに自然由来の「菜種オイル・コンポジション」を介し低温時の柔らかさを保っているのだが、スタッドレスタイヤ特有の腰砕け感がなく、構造を含めたタイヤ全体で雪上の凹凸を捉えている感じがとても好印象だった。ハンドルを切ると、C180はとても素直に向きを変えていく。操作に対し応答遅れや切りすぎが起きないため、クルマの挙動が乱れない。よって、後輪駆動にも関わらず”普通に”アクセルを踏めてしまうのだ。
その安定感を確認して速度を上げてみるのだが、穏やかな運転特性は変わることなく旋回速度だけが上がっていく。アイスバーンでフロントタイヤがグリップを失うような場面でも、クルマはゆっくりと軌跡を膨らませるだけなので、アクセルを緩めるだけで軌道を回復できる。普通であれば「ここから滑り出しそうだな…」という状況でも、上手にカーブを曲がってしまうのだ。

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3:まさに自由自在。その秘密は”電子制御との協調”にあり

運転中にメーターを注視してみると、C180のESP(横滑り防止装置)が、実にきめ細かく作動しているのを確認できた。そんなバイキング・コンタクト 7に対し、比較対象のスタッドレスタイヤでは、まずハンドルの舵角が大きい。舵角が大きい分だけ前輪が抵抗となり後輪が横滑りする。そして、その横滑りを止めるためにESPが大きく介入し、ブレーキをかけたりアクセルを絞ったりする。その結果、クルマの動きがギクシャクしてしまうのだ。
こうした違いに私は思わず納得してしまった。そもそもコンチネンタルは、こうした車両制御技術を開発している会社じゃないか! と。ただしそれは、制御技術に頼ったタイヤ造りという訳ではない。むしろ、こうした状況でもトレッド面がよれず、きちんと路面に接地しているからこそ不要な制御が抑えられるのだ。制御が働くような過渡領域では、電子制御と協調したグリップ性能を発揮できるのである。
バイキング・コンタクト 7は、スタッドレスタイヤの弱点とされるウェット性能を高めるために、独特な菱形形状の「インテリジェント・パターン・デザイン」を採用している。菱形におけるV字部分は、溝体積を増やすことができ高い排水性が確保できるのだという。しかし溝体積が増えればトレッド剛性が落ちるため、V字の角度は45度以下に設定。なおかつ「ソリッド・リンケージ」と「インターロック・ブリッヂ」という2つの補強を効果的に配置し剛性を保っているのだという。
こうしたソフトなコンパウンドと、タイヤ全体の剛性のバランスはEPSを切ってからの走りでも実証された。その圧倒的に少ない舵角は正確な操作を生みだし、意図的なオーバーステアへと転じることも、アクセルによってドリフトアングルを維持することも自由自在。
圧巻は100Rでの高速走行で、これまでに経験したことがないほどの高いスピードレンジでも自信をもってコントロールすることができた。これが富士スピードウェイの100Rを、全開でドリフトしているようなものなのだと思うと、ちょっと身震いをしてしまった。
だが、それ以上に感服したのは、ESPをアクティブにした際の高速旋回性能だ。舵角は一定、アクセルは全開。しかしC180は一度も修正舵を当てることなく、時速100km/hレベルの定状円を安定した速度と姿勢で走り続けてしまうのである! この走りで、私は身をもってメルセデス・ベンツの制御技術の高さを思い知り、かつそれを最大限に活かすには、タイヤ側の高いレベルが必要だと痛感したのである。

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4:氷上で垣間見た、日・独の意識の差

氷盤路面では、30km/hからのブレーキ制動とスラロームを試した。この高い速度設定は、この広大な試験路があるからこそできること。そして、タイヤの完成度に対する自信の表れだろう。
実際その制動力は、非常に高くかつ安定していた。当日は気温がマイナス4.5度と氷上テストとしては暖かく、日ざしが照りつけ氷がどんどん溶けていく状況ながら、3回のテストで制動距離のばらつきが最大0.2mにまで抑えられていたのだ。対して比較タイヤは、先んじてテストしたにも関わらず回を重ねるごとに制動距離を伸ばし、その差は最大で1.9mにまで及んだ。
アイス路面における制動力の高さは、前述したコンパウンドの密着性に加え、「エフェクティブ・アイスエッジ」も効いているようだ。ブロックのショルダー部分が突起したこのエッジは、ワイパー効果を発揮して路面の水膜を除去するのだという。実際の走行では、ABSがブレーキをリリースした際のグリップ回復力が早く、ABSの効き方が非常に細やかになるのだ。
現在販売されているスタッドレスタイヤは、コンパウンドに水膜を吸収するマイクロバルーンや吸水孔を搭載するのが一大トレンドとなっている。私もこれまでの経験から、こうした技術が先進的だと思っていたのだが、バイキング・コンタクト 7の制動力には本当に驚かされた。基本的な技術を丹念に磨き上げることで、ハンドリングと氷上性能という相反する要素を両立しているのである。
操舵を要するスラロームでは、エフェクティブ・アイスエッジの効果がさらに顕著になった。バイキング・コンタクト 7は氷を捉える能力が明確に高く、初期からハンドルの舵が効く。さらに素晴らしいのは、切り返した際に慣性でリアタイヤが流れる量が少なく、その動きが穏やかなこと。そのため、全ての動作に連続性が作り出せ、アクセルで流れを止めて、クルマを前に進めることが自然にできる。対して比較タイヤは、切り込んでから遅れてグリップが立ち上がるため、操作が後手に回りコントロールが忙しくなる。
もっともこれは、コンセプトの違いとも言えるだろう。比較タイヤは、氷上でなるべく直線的にスピードを落とし、低い速度で安全に曲がらせる考え方なのだと思う。一方でバイキング・コンタクト 7は、氷上でも”普通に”クルマを走らせようとする。そのために過渡特性を徹底して穏やかにしているのである。そこには欧州の運転に対する意識やレベルの違いを垣間見た気がした。
こうした試走を踏まえ、最後は凍り付いた湖の上で高速スラロームを楽しんだ。正直に言ってバイキング・コンタクト 7は、私がこれまで経験したどのタイヤよりも良く曲がり、良く止まり、ここが大切なのだがーーーー過渡特性の穏やかなスタッドレスタイヤだったのである。

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5:刻々と変化する一般道で実感した確かな信頼感

テストコースで試乗を終えたあとは、宿泊地である北見市に向けて一般道を走り、翌日は流氷が接岸した網走へと向かった。ここでは、早朝のアイスバーンだけでなく、日中には氷が溶けウェットからドライまでバラエティに富む路面を経験できた。
前述したインテリジェント・パターン・デザインのおかげで、バイキング・コンタクト 7の排水性は確かにレベルが高い。シャーベット路でも耐ハイドロプレーニング性能がきちんと確保されていた。
ドライ路面では、まったりとタイヤが路面をつかむ。しかし、剛性バランスは取れており、腰砕け感はなく操作性も良好。これなら夏タイヤとしてでも使えるのではないか? と思えるほどだった。しかしそれは、当日の気温にバイキング・コンタクト 7の特性がマッチしているからこその印象だろう。
結果として、この冬タイヤとしてのバランスの良さが、舗装路でも快適な乗り心地を引き出していると感じた。唯一摩耗に対する確認だけは今回できなかったが、ここもコンチネンタルは相当の自信を持っているようだ。
今回一般道では、刻々と変化する難しい状況でも、テストコースでの高速体験が筆者に絶大な信頼感をくれたおかげで、ストレスなく運転することができた。真冬の北海道でFR車という厳しい状況なのだから、これは本当に驚きというほかない。
ちょっと褒めすぎにも思えるかもしれないが、これは本音のインプレッションである。むしろ2018年の時点でバイキング・コンタクト 7がローンチされていたことを知らなかった自分が、タイヤ好きとしてはちょっと恥ずかしいくらいだ。